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遠い遠い 

距離とかじゃなくて
物理的なことじゃなくて

遠い遠い

悩む君はかわいい。

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深夜のドライブ 

おしゃべりをしながらの高速はとても楽しくて

このまま遠くまで行きたくなるんだけれど

高速乗り放題は終わったからできないのだ。


あの頃の懐かしい曲を聴いて

『ああ、ずいぶん違う未来に来てしまったなあ』

と思うけど

自分の選択に後悔はないので

ただ残照が眩しいだけなのだ。

あがぢべべー。 (Agua de Beber) 

男が居酒屋の隅で久しぶりに会った女は、マイルス・デイビスを聴いていると言った。

彼女と別れて6年以上。
一緒にいたときに、"帝王"を聴いていた記憶はない。
男の心がざわつく。
案の定、彼女は自分でない男からマイルスを教えられていた。

この程度で嫉妬する、不甲斐ない自分の心が、男は情けなかった。
ばかばかしいにも程がある。
社会で働く女である。7年も経てば変わっていて当たり前だ。
変わったというなら、自分の方こそ結婚し、子供までいるのだから、彼女からすれば別人だろう。

だが情けないのはそれだけではない。
少なくとも彼女と付き合っていた頃、自分はよくジャズを聴いていた。
演出の部分もあったが、確かに当時は好んで聴いた。
それが今はどうだ。
さっぱりジャズは聴いておらず、聴きやすい今風の曲ばかり好んでいる。
昔は違っていた。
コルトレーンも、チック・コリアも、ハンコックも、スタン・ゲッツも自分が彼女と聴いていたのに。
単に生きるだけになっている事に腹が立つ。
伊達を忘れた自分が情けない。
彼女の方は、まだ枯れていないのに、だ。

『またいつか飲みましょうね』
別れ際に、女はとろりとした表情で笑う。
ああ、いつか見た笑顔だ。
捕まえ損ねたやつだ。

…こぼれた水は戻らない。
"おいしい水"は二度と手に入らない。
職場の冷遇にくじけそうになりながらも働く彼女に、できることはもうない。
ただ人は、自分の生きる場所で生きていくしかないのだ。

彼女はきっとまた新しい世界を知る。
新しい人を知る。
そして二人とも、知らない他人に近づいていく。
悲しむな。
それが僕らの選択だった。

男はそう噛み締める。
噛み締めて歩いている。

「Eu quis amar mas tive medo…」
アストラッド・ジルベルトを口ずさむ。

実話。 

老夫婦は、ポケットにリモコンを持っていた。
「何でリモコンを持ち歩いているんですか?」
『家の近所のおばさんが、リモコンを盗っていくのよ』

…かなり考えてしまった。
これは夫婦そろってぼけているのか?
それともそのおばさんがボケているとでもいう事か?

「鍵をかけて出てこられたらどうですか?」
『そのおばさん、窓を壊して入ってくるのよ』

…それはもう犯罪じゃないか。
この話は、どの部分の、何パーセントが真実なのだろう?

リモコンを持ち歩く老夫婦?
窓を壊してまで他人の家に入ってくるおばさん?
それとも…?

「月に吠える」 

あの娘はもう待たないだろう。
月に吠えて、恋心を捨てるだろう。

真実の恋だった。
けれど、それより大切なものがあった。
それを彼女も分かっていたのだ。
だから
いずれきっと、彼女は別の男と家庭を持つだろう。それが生きるということなのだから。


湖畔の小さな屋敷に、従者と、彼の女主人は暮らしていた。
ここは昔、女主人が思いを寄せていた男の、別荘だったところだ。
この静かな場所で二人は、
昔あった戦争のことも
月にいる人々のことも
何も語らず、ただ静かに暮らしていた。


『可笑しなものですね…。
昨日動いた指が、今日はもう動かなくなって…ちょっとのことで息が切れてしまう。
これが老いるということでしょうか?』

冬の窓辺で、彼の主人はつぶやいた。
『…このまま春まで生きてはいられないかも知れませんね』

「あの…失礼ですが」
『どうぞ?』
「不安なのでございますか?」
『…いいえ。
私はもう何百年と生きました。
"死"という感覚が、実感としてないのです。
ですから不安や、恐れといったものはありません』

そして彼女は、カップに残った紅茶をすすると、息をつきながら言った。
『ただ…もうこの景色を見られないのは、寂しいですね』

"自分ではないのだ"
と、従者は思った。
あるいは、戦争中ずっと尽くしてくれた少年が悲しまぬよう、主人が気を遣ったのかもしれなかった。
しかし…それでも…。

…言葉が出かかったが、彼はもう尋ねるのはやめた。
そして、彼の"若く"、"美しい"主人と共に、雪に覆われた稜線をぼんやりと眺めていた。



女主人が亡くなったのは、春まだ浅い日だった。


その夜、彼は月に吠えた。

それは…とても悲しい声で、あるいは月にいる、女主人の鏡像にも届いたかもしれない。



…湖畔の小さな屋敷に、墓守が一人暮らしている。

男がいつからそこにいるか、
今はもう
誰も知らない。

                   (インスパイア・ターンAガンダム)

地獄の貧乏くじ 

 毎度のお運び、ありがとうございます。

あるところに男がおりまして、まーこの男、とにかく間ンが悪いと言いますか、運が悪い男でして。

うどん屋に並びますと、必ず男のところで玉切れになるんですな。
100個限定品のスーパーの特売品も、必ず男の前で品切れになるんですわ。
仕事でのチャンスを逃したことも数え切れずで、おかげで勤務態度は真面目なのに、出世からは見放されております。

そんな彼が恋をしまして。相手は社長令嬢。
もう本気の本気ですから、実も蓋もないほどアタックするわけです。
ところがやっぱり間が悪い。デートに誘っても、彼女のほうが都合が悪かったりして、うまくいかない。
それがやっと、デートにこぎつけるところまで行ったんですな。

昔々の三国志。 

 『孫権、孫権よ。』
 ある日うたたねをしていた孫権は、懐かしい声に起こされた。いや、実際は起きていたのか、何しろ枕元に立っていたのは死んだはずの父と兄だったのだから。『仲謀、起きなさい。お前に渡す物がある。』
 「やや、これは、父上、兄上。黄泉の国へ行かれたはずが、何ゆえ吾輩のもとに。」
 『判らぬか。まあ仕方あるまいが、とにかくこれからお前はこれを肌身離さず持ち続けるのだ。』そういって、兄が懐から取り出したものは、なにやら黒くて丸い物体。
 「…なんで御座いましょう?…赤ひげ大爆発…?」その物体の周りには、そのような貼り紙がしてあった。
 『仲謀、これは人の生死をつかさどる器械ぞ。この中には"たいまぁ"なるものが組み込まれておっての、持ち主の命の残り具合を指しておる。それがなくなると、この中から赤ひげなる世にも恐ろしい物の怪が飛び出してきて、持ち主の命を連れ去ってしまうのだ。』
 「そ、そんなあ。」『情けない声を出すな、孫権。おぬしの兄も、受け取ったのだ。』 『いやいやで御座いましたが。』そうつぶやいた孫策を、孫堅はキッとにらみつけて、さらに続けた。『まあ、これを持つ事が呉候の証。諦めなさい。ほれ。』そう言うと、孫堅は孫策の持っていた赤ひげナンチャラを孫権に放り投げた。
 「うわわあ。」思わず孫権は孫策に赤ひげを投げ返してしまった。『ややや、おぬし、兄に向かって何たる事を。』そう言いつつ、孫策は隣にいた孫堅にそのままそれを手渡した。『あ、おまえ、なんちゅうことを!孫権、受け取れ。』「厭ですよ、おふたりともこれが原因でお亡くなりになったんでしょ。僕そんなん欲しくないです。」『あ、コラ、もう俺は死んでいるのだ。何故また死ぬような目に会わにゃならんのじゃ。』「だから厭なんです!必ず死ぬんでしょ!?」『オゥ、俺など、まるであだ討ちだったぞ。』「やぁだよ、そんなの~!!」
 …しばらくの間、赤ひげはぐるぐる三人の間を回っていました。しかし、結局孫権はそれを押し付けられてしまったのでした。「ううっ、やだなあ。」
 こうして、呉の国は孫権の下に大きくなったのでした。めでたし、めでたし。

 えー、あんまり詳しくないので、細かい突っ込みどころは無視してください。

自殺なんかじゃないと、きっと言える。 

 「ZARDのおっちゃん」
 坂井泉水のことを、我々はこう呼んだ。
 もちろん、坂井泉水が男ではないことぐらいは知っている。
 なんというか、彼女の極端に露出を避けるところに、我々は神秘性よりも、恣意的なものを感じていて、それを茶化して『坂井泉水は実は男だ!』という、お笑いネタにしていたのだ。
 そう言ってみると、なんだか「ざーどのおっちゃん」という呼び方は実にしっくりきた。なんだか彼女に、気風の好さなんてことも感じていたのかもしれない。
 彼女の死後に露出は図らずも増え、彼女が想像以上にたおやかな人であるのを知ったのだが、それでも不謹慎にも、私は彼女に親しみを込めて呼びかけるのだ。「ZARDのおっちゃん」と。


 「はあ、はあ。」

 …彼女は病院の非常階段を上り下りしていた。人目につかないように、朝早く、人気の無い場所を選んでのことだ。
 彼女に子宮頸癌が見つかったのは、去年の事。手術は成功したはずだったが、今年の四月に肺への転移が見つかり、すぐに手術が行われた。
 …それから彼女は、リハビリに取り組んでいる。
 手術そのものに恐怖は無かった。
 「それよりも、歌えなくなる方が怖い。」
 彼女はつぶやく。外科手術も、抗癌剤も、彼女の気力を萎えさせようとする。将来は不安ばかりだ。歌を生業として、人々にメッセージを送り続けてきた自分が、歌えなくなるかもしれないという事。歌えない鳥に生きる価値があるのかしら。そう挫けそうになる心を、彼女は奮い立たそうとして、リハビリを続けている。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「歌えなくなる方が怖い。」
 彼女はより、明確な意思を持ってつぶやく。リハビリに取り組んで、何日目だろうか。
 もはや外科手術も、抗癌剤も、彼女の気力を萎えさせることは無い。結局、彼女は心から希望の力を信じる事ができる類の人間だった。弱くて、ふらついても、前に進める人間だった。
 彼女は今日、もう二往復も上り下りしている。今できる、最善のことをしよう。その意思が、彼女に力を与えていた。
 痛みがあること。汗をかくこと。自分の体が、こんなに愛しく思えたことは無かった。
 「歌えなくてもいい。」
 今度はさらに明確な意思を持って断言した。非常階段の踊り場で、彼女は息を整えながら考える。なんだか矛盾してるよ。でも、その言葉は、なんだか同じところから出てきたような気がした。目いっぱい生きよう。歌えるなら思いっきり。歌えなくっても思いっきり。歌えない私はとてもさびしくて、ちっぽけな存在かもしれないけど、だったらそれをみんなに見てもらって、誰かの力になろう。私が惨めに戦う姿は、誰かをきっと勇気付けるだろう。
 力がみなぎる。しんどくて、ふらふらしてるけど。
 …五月の夜明けの空が明るくなってきた。ふと、空を見上げる。昨日は雨だったのに、今日の空は高く晴れ渡っている。雨に洗われ、澄み切った空気。息を吸い込む。今なら、一番上手く歌えそうな気がする。ありがとう。生かしてくれて。

 空をもっと見たいな。

 彼女は、手すりに、腰をかけ、天を、仰いだ。

「お局戦士セイラアムーン」その7 

 会社のデスクで、あかりはあせっていた。「ない、ない!」
 あかりはいつも、A3サイズのスケッチブックを持ち歩いている。これは仕事で使用しているもので、会議などであらゆることを書き留めるために使っているものだ。それはちょっとしたことでもメモしたもので、部下の顔色が悪いとか、交渉相手の言葉に引っかかるところがあったとか、顔が犬に似てるとか、似顔絵が上手くかけたとか、今日の晩御飯は何にしようかとか、まあ、ホントに何でも書き込んでいる。しかしこれが馬鹿にならないもので、頭の中のモヤモヤしたものをまとめていくと、意外な結論や、見えなかった真実にたどり着く事があって、あかりは何度もこれに救われているのだ。
 以前営業にいた時、上司が大口の顧客との契約で先走りしていた時、同席した先方との会議で、『やたら相手の経理部長が視線を外す』と書き留めて、そこで改めて書類をチェックしてみると、資金の流れになんだか不自然なところを発見。上司とともに「これはおかしいね。」と、問い詰めたところ、なんと向こうの資金の焦げ付きを、こちらの資金で埋め合わせる形をとらされていることになっていて、『それはちょっと困ります。』と、ストップがかけられたことがあった。
 自分の仕事でも、"屋根に上ったらはしごを外されそうになった"のを、このスケッチブックで気が付いたり、部下の仕事のミスに気が付いたり、あるいは屋台で飲んでたときに、隣のおっちゃんたちの会話をメモってたのが、のちに新製品のヒントになったとか。これはもう、あかりにとって、まさに無くてはならないアイテムである。だから、はっきり言って通勤には邪魔になりつつも(満員電車じゃあね…)、これの入るショルダーを使い続けている。言ってみれば肌身離さず、に近いのだ。
 それが、ない!
 「どど、どこよ!?」

「お局戦士セイラアムーン」その6。 

 そろそろ寒くなってきた町を、あかりは一人家路についていた。自分に能力が発動してから、すでに一ヶ月が経とうとしていた。あれからもう二体の妖魔を封印したあかりは、乗り切れない自分の気持ちに関わらず、もう既に自分のあずかり知れぬところで、事態は深刻化しているのを実感していた。妖魔はいつの間にか"乗っ取り"による侵略を開始していたのだ。先週はアイドルになりすましてコンサートで洗脳を行っていた妖魔を消し去った。
 「はあぁ…。」だが、あかりにとって、ストレスは溜まりっぱなしだった。浄化しても、既に喰われた人間は元に戻る事は無かったからだ。浄化された瞬間、一瞬だが顔の邪気が消え、元の意識が戻り、満ち足りた顔で消えていく。それもただ、辛いだけだった。「死んだ人間は生き返らない。」思わずつぶやいた、その事実を確かめるばかりの日々。
 杏子がいなくなった職場も一時混乱したが、今では以前と何も変わらないようだ。穴埋めは誰かがして、会社の日々は、いなくなった杏子を忘れさせていく。『…あの子はどこに行ってしまったんでしょう…?』杏子のマンションの家財道具を片付けに、実家から来た彼女の母は、そう悲しそうにつぶやいていた。その言葉の重さも、あかりには負担になっていた。
 話せる人が欲しい。この寂しさを分かってくれる人が。
 一瞬、タキシードの男が頭に浮かんだものの、あかりにとって彼は運命共同体であり、彼女に妖魔の存在を知らせるコーディネーターであり、恋愛の対象にはなりえないのだった。

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